2011年1月12日水曜日

【おと】 ナイジェル・ゴッドリッジ(Nigel Godrich)に学ぶ「プロデュース」と「制作」

■原点に
まだ1月なのか、ぜんぜん連絡ごとこなしてないや。というわけで、おやつPっても、僕に関しては音楽しかできませんから(しかもよつうちの打ち込みはまだまったくその域に達していない)、そこに再び立ってみます。んじゃ、なんか目標は?ってことで、こんな方がいます。日本であまり人気がないようなので、翻訳した概要なんか出しつつ。

■イギリスのプロデューサー、ナイジェル・ゴッドリッジ
英語版Wikipediaから要点をさらいます。

ナイジェル・ゴッドリッジ
レコーディングエンジニア兼プロデューサー、ミュージシャンで、しばしばレディへの6人目とも
2009年からはトム・ヨークのバンドにも加入している


94年から現在まで
長くレディオヘッドにかかわり、いわゆる「レディオヘッドの音」として知られるものは彼の仕事
彼がジョニー以外の全メンバーより若くしてエンジニアであるのはロックの史上まれなこと
94年「My Iron Lung」に関わって以来の関係であり97年のアルバム「OK Computer」から10年ほど距離を置き「In Rainbows」で再び仕事


その他
…BECKの「Mutations」や「Sea Change」といった代表作を制作
ジョージマーティンの指名でPaulMcCartney「Chaos…」を制作、これも有名


90~93はアシスタントエンジニア
94年RIDEの「Carnival of Light」などでエンジニア
95年RADIOHEADの曲「Black Star」ではじめてプロデューサー
97年あたりから総合的なプロデューサーの仕事が増える

…あとはBECK作品、ポールの名アルバムなどに関係してキャリア積んでます。FenderRhodesやウーリーにテープエコーや反響を加えて立体的にするお仕事に定評があります。なにより、綿密でクリアなビートがもう滅茶苦茶に立体的で、低域も出てハットも聞こえる、という感じです。ミュージシャンを怒らせる技術にも定評か、まあいいや。23歳でRIDEとか世の中滅茶苦茶にしているあたり共感しますが、日本語版Wikipediaはさほど充実していなくて、日本でも海外でオルタナ関連のお仕事していたみなさんからしばしば「ゴッドリッジの仕事は過大評価」というような声も聞こえますが、ルサンチマンでしょう。RIDEもそうですが、94年周辺を境にオルタナの音が激変しています。

もひとつ重要なのは、上の業績はほんの一部で、ゴッドリッジは年間4枚のアルバムをタイトに数年間仕事しているんですね。これは本当に尊敬したい部分です。とはいえ、成功ばかりだったら参考になんてならないわけですが、きっちりと下積みしたり、失敗もしているんですよね。

イギリスはロック ちい覚えた

■平面と立体の交差点
カイリー・ミノーグの「Wow」やRadioheadの「In Rainbows」各曲といったUKサウンドは、ほぼ360度の位相(180から向こうはMS-CSなどで逆位相を作ったり反響を楽器の特性ごとに細かく変えたり、発音する点に揺らぎをもたせたり)になっています。実はその方が音圧もスムーズに上がります。USやラフトレード系はまだそこまでいってないか、立体的に聞こえても音圧が低いだけだったりします。

自分の最近の曲も、ボカロアンセムズに入った例の曲も、平面にしたときの限界まで結構詰め込んでいて、もう180度ではかなりパンパンです(しかも、2点しか使っていないわけで、パターンは多ければ多いほど楽しいことできますよ奥さん!)。日本のエンジニアはあまり楽器ごと、あるいはドラムのパーツごとの位相を裏に回したりだとか、反響まで意識したりはしません(SUPERCARのHighvisionみたいな打ち込みと両立している系統はちょっと別格っぽい)。

打ち込み系はまだ位相を意識して聞いていませんが、日本のロックはほぼ左右平面で構成されています。ギターは左右に振れ、覚えとけ!みたいなー。この間サウンドデザイナーって雑誌を買ってみましたが、まだまだそんな感じですよね。ところがボカロに関しては、もうこの系統をだんだんと無視しはじめています。ってもまだ3年、たった3年いったかいかないかなんですけどね。

打ち込みから現実の音へつながるときに、空間や位相の再構築をしていくのは至極あたりまえの流れといえます。キックひとつに余韻の「グワッ」って音から計算しつくしている打ち込みの音作りから、現実の空間を把握する方法を学ぶことは、技術向上につながります。同時に、音の設定を難解にすることでビジネス上のボトルネックとして思考することも可能です。たとえばサラウンドって国際規格になってますけど、これもちょっとしたボトルネックですよね。

yuukiss先生など「Nostalogic」冒頭のフィールドレコーディングした音では、もう縦横360度座標を志向されています。このあたりの有名Pさんたちは昔から位相でガンガン遊んでいました。なんかこう実用方面というよりは美術館に火をつけるようなあれです。1ヶ月先の音がもう未来で、僕にはおっついて理解することさえ困難ですが、この遊びをMIXやマスタリングにみんな取り入れ始めて奥行き~とか、そんな流れですよね。あとぶっちゃけいうと、反転しただけだったり、ただ人間の頭にあわせてマイク2本立てても、結果として気持ちが悪いです。多分なんか最近の飛び出しちゃう系3Dと同じような感じなので、調整してやらないとリフレクションがダイレクトに耳元でガサガサして気持ちが悪いと思います。

いやもちろん趣味や性別にもよりますけれどもね!

■飛び出たものにはなにかある
あらゆる場面において飛び出たなにか、それは大概「秀でている」わけで、当たり前ですが参考にして、そこから駒を進めなければなりません。ゴッドリッジの場合は、ポール・マッカートニーを怒らせる程度に嫌な奴みたいです。こういうの「困る!」っていうひとが多いですけれども、その結果が昨今ののっぺりしたロックミュージックですよね。なんか先にあげた雑誌によれば、音以前にエンジニアにはコミュ力が求められているそうですが、そんなものは売るために必要なかったわけです。そも、芸能というものは昔からそういうものだったはず。やっぱり、まず音がいいものを聞きたいじゃないですか。裏方に求められるのはそういうもので、コミュ力なんかじゃないと学びました。そも、音楽を本気で聴いている人に対するボトルネックって、コミュニケーションがとれていたら成立しません。夢がないし。ちなみに有名な話ですが、ゴッドリッジをポールに紹介したのはジョージ・マーティンだそうです。イギリスのポップスは歪んでますね。んでもって今ゴッドリッジはアメリカはLAが拠点みたいです。

今飛び出しているものは、確実にボーカロイドです。